伊豆半島一周自転車の旅(03)

#03熱海

ちっさい男

コンビニを後にして間もなくおばちゃんの言った通り登り坂にあたった。

でも『ライト復活』で勢いも復活した僕は果敢に攻める。

最初は助走のお陰で勢いそのまま進めたが、やはり徐々にペダルが重くなり、必死こいてこぎ続けるも、最後は途中で足を着いてしまった…

「駄目だ…」

そしてまた自転車を降りて押して歩く。

「チキショー荷物が重いんだよ…」

自分の脚力は棚に上げ他責にしてみる。もうこの頃になると思ってる事全てが口に出て、全てが独り言になって来る…

「下り坂まだっすか?」

「ふぅ~腰痛ぇ~」

とえっちらおっちら坂を登って、そこそこ来た所にあった工場の前で休んでいると、今度はその工場の関係者であろうオジサンに声をかけられた。

「あそこ過ぎたら後は下りだから…」

「えっ!?本当ですかー!?」

「おん!だから頑張れ!」

「有難うございまーす!」

おじさんに励まされたのと、坂が終わると言う事で俄然やる気が出て来た。

「…あと少しだ…あそこまで行けば…」

僕は自転車に股がり、最後の登り坂にペダルを踏みまくった。

そしておじさんが言っていたポイントを過ぎると熱海へと続く下りが始まった。

徐々に街の灯かりが見え始めるのと同じく、ちらほらホテルが出始めてきた。

「来たぞーっ!熱海っ!」

熱海駅に到着すると、駅周辺には自転車を組み立てている人がちらほら見えた。

彼らは恐らく熱海まで電車で来て、ここから自転車で伊豆半島を廻るのだろう…

俺!ここまでも自転車ですからっ!…

今日の『東京⇒熱海』の目標を達成した僕は完全に自己に陶酔していた…

そしてこれ見よがしに熱海駅をバックに愛車『ゆに子』の写真を撮る…

なんとも器の小さい男だった…

熱海

僕は熱海があんな山の斜面にある街だとは知らなかった。

熱海駅で写真をパチリパチリ撮り、本日の野宿予定地の『熱海サンビーチ』を探しに、アーケード街を抜けると結構な下り坂だった。

それはもう『駅には二度と戻らない…』と決意させるぐらいの坂だった…そして何やら分からず先に進むとかなりお洒落な海岸にたどり着く…

海岸沿いは一部工事中があるものの浜辺はブルーライトでライトアップされ、なんとも幻想的な雰囲気をかもし出していた。

「おぉ!これが『熱海サンビーチ』かぁ!」

熱海サンビーチがブルーにライトアップされている事を僕はWEBで確認していた…

デッキにあるベンチにはカップルが座り、浜辺にもどこか温泉宿の浴衣のままで『キャッキャ!キャッキャ!』戯れるカップルがいた。

そんな中僕は早々に銀シートを浜辺に敷き座り込む…。

「いやぁ~今日は良く頑張った!」

そして間もなくバックパックを枕に寝転び、夜空を眺めながら『熱海』に浸っていた…。

海岸に打ち寄せる波の音をバックに、どこにいるかも分からない虫の鳴き声、若者達・外国人観光客達の笑い声、花火の音、満天の星空、それら全てが心地よく感じられた。

「熱海っていいなぁ…」

そう思って次に気が付いたのが23時過ぎ…なんと僕はいきなり砂浜で2時間近くも寝てしまっていたのだった…そして起きてみたら、例外無く『蚊』に刺されまくっていた…

「やられたーチキショーっ!」

けれどもキンカンも虫よけも家に忘れて来ている…

「かゆい…」

朝の散歩

2007年9月23日(日)2日目の朝を迎えた。

昨晩は『熱海サンビーチ』の砂浜にテントを張り一晩を過ごした。

暑くもなく寒くもなく凄く快適な夜だった。

がしかし、テント内に『蚊』が紛れ込んでいたようで…しつこいようですが、また刺されまくりました…。

そして外の空気でも吸おうと、テントを開けるとそこには朝日に照らされてキラキラと光る海が広がっていました…

「すげぇ…すげぇ…」

これしか出なかったんです…。

僕はまた一瞬にして『海を見る事』に魅せられてしまいました…

さ、散歩でもしてみようかな…

朝の弱い僕にとって日常では絶対あり得ない朝の散歩を、ここ『熱海サンビーチ』の砂浜でする事にしました。

波打ち際を独り歩く今年30歳の男…打ち寄せる波が時折僕の足にも届く…

「ひゃっ!冷たい…」

絵にはならない光景でした…

それでも砂浜を裸足で歩く感触はとても気持ち良く、呼吸をする度に入って来る冷たくて澄んだ空気はこの上なく爽快だった。

「んーっ!爽やかな朝だっ!気持ちがいいっ!」

そして砂浜の方を振り返ると、隅の方にはテントと自転車がある。

「色々あったけど…なんとかここまで自転車で来たんだな…」

改めて達成感を味わった。そしてそれと同時に2日目に対する意欲も湧いてきた…

「うぉしっ!今日も頑張るぞっ!」

2日目スタート

カシャッ!「おしっ!これで熱海制覇!」

朝の散歩を終え僕はテントをたたむと、熱海のシンボル(?)金色夜叉『貫一お宮』像の前で愛車『ゆに子』の写真を撮っていた…

『♪僕が貫一、君はお宮、まさにこの世は大迷惑♪』。

奥田民生のいた『ユニコーン』が大好きだった僕は、名曲『大迷惑』に出てくる『貫一とお宮』をこの目で見て、写真にもおさめたかった。

実はこの“『貫一お宮像』を写真に撮る”事が伊豆半島を一周する事の『次の次』に重要な目的でした。

…これで『ユニコーン好き』の義務は果たせたな…

「おしっ!じゃあ石廊崎行くかー!」

2日日の目的地は伊豆半島最南端の石廊崎。

石廊崎までは熱海から海沿いに国道135号をひたすら南下し、距離にして約100kmを走る。バックパックを背負い、自転車に股がりペダルを踏むと…

「ケツ痛ぇ~」

毎回の事だが1日10時間以上もサドルの上に座っているとお尻が大変な事になる…。

「これは結構キツイなぁ…」

しかも今回は背負っている荷物の重さのせいか特に痛い…そして熱海を出て間もなく『登り坂』にあたる…

「うわ…いきなり来たなぁ…」

これで完全に出鼻を挫かれ…2日目最初の坂から足を付いて歩いてしまった…

あぁこれが伊豆半島なんだ…伊豆半島の厳しさを改めて感じ、自分の気持ちが引き締まったのがわかった…そして歩きながらようやく登りきった坂の上には、あの『秘宝館』があった…

「さすが『熱海』…面白れぇじゃねーかぁ…」

因みに…『秘宝館』には行ってませんよ(笑)

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